意外と暑さにも弱い水なす

 熱帯地方原産の野菜だけに、水なすは寒さに弱いです。逆に夏場の暑さも限度を超えると木が疲れてしまい、水なすも弱ってしまいます。水なすは、意外と暑さにも弱いのです。水なすのお漬物がお中元などの贈答品として需要が増える7、8月は、水なす出荷の最盛期であり、一日の収穫量はそれまでと比べ数倍になります。真夏のビニールハウス内の温度は40℃近くに達することも珍しくありません。湿度も高く、体を使う作業なので体感温度はゆうに50℃近くはあるでしょう。そのため、一旦ハウスから外に出ると真夏なのに涼しく感じます。
 このように人も体力的に過酷な夏の農作業ですが、水なすも暑さと闘っています。気温が高くなり太陽が照りつける夏場になると、水なすも生育状況が急に悪くなります。
 このような環境下に耐えられなくなった水なすの一部は、見た目はツヤがなく、炭のようなくすんだ色になります。症状が進むと皮が硬くなり、水なすの水分量も減るので果肉がパサパサしてしまいます。出来る限りこのようにならないよう温度管理や水やりなどに気をつかいます。しかし一旦品質の低下してしまった水なすはランクが落ち、加熱しない漬物には向かなくなってしまいます。

 実は夏に水なすのお尻を中心に艶が無くなりくすんだ状態になるのは、昨今の泉州地方の水なす農家の間では、大きな産地の問題・課題となっています。その対策は一筋縄にはいかないのですが、温度・水分・整枝・葉欠き、収獲、ホルモン処理など、あらゆる水なす栽培上の技術を用いた総合的な対策を講じることが必要となっています。

水やり
 端的に言えば、春に3~4日に1度の水やりは、梅雨明け後には2日に1度くらいとなり、さらに真夏には毎日となります。水なすは、他のナスに比べると、豊富な土壌水分を必要とします。梅雨期は心配ありませんが、その後の真夏の高温・乾燥には弱いです。開花や結実が悪くなるのも、艶なしの「ボケナス」も、皮が硬くなったり日焼けするのも端的には乾燥・水不足が原因です。ただし、こうした水やりの頻度は、どれだけ日常の整枝や葉欠きを頻繁に行なっているかということと重要な関連をもっています。枝葉が込み合い、不出来な果実が見るからに余分にぶら下がっていると言った状況では、1日1度の水やりでも次第に汚い畑となってしまいます。常に整枝や葉欠きをおこない、乾き具合を確かめながら水やり、と言った基本的なスタンスは夏の間の管理でも違いがありません。

 7月に入って梅雨明け後、水なすには正念場となります。それは乾燥・肥料切れになりやすいだけでなく、梅雨期に伸長した側枝に開花した果実がいっせいに肥大し、収獲のピークを迎えるからです。
 果実の負担が大きくなると、枝の先端部が細くなり、また脇芽の発生や伸びも悪くなります。枝の先端部を見て、開花した花の上に充実した蕾が1個以上、開いた葉が2枚以上無い時は、水や肥料不足で草勢が概して弱っている証拠です。このような生育では短花柱花(雌しべが周りの雄しべより短く埋もれており、受粉が上手くいかず、ホルモンバランスも崩れている。多くは養分欠如が原因である)が多くなり着果しにくく、艶なし果や日焼け果、また裂果が多くなります。
 このような時には、まず小果で早めに収獲し、潅水と追肥をして、草勢を回復してやります。肥料が不足気味の時は、規定濃度の液肥を株元と葉面に散布してやるのも効果が大きいでょう。

水なす:追肥
 追肥を行なう場合は、株元から十分離れたところに入れてやること。ちょうど畝の肩部分に溝を作り、そこに肥料を入れて、土で覆うとよい。こうすることで、肥料焼けを防ぎ、かつ潅水時に肥料が流れ落ちてしまうのを防ぐことができる。

早めの収獲
 水なすは花芽分化後約30日で開花し、開花後20日前後で収獲になります。前半は果実を肥大させる株の負担が大きくなるので、枝の先端部の観察によって、弱りそうな時には早めに60グラム程度の果実 で若採りするするのが、後半の成疲れを防ぐコツです。
 幾分小さいうちに収穫した方が、数量が多くなり、なり疲れせず後半にも収獲果数が多くなり、最終的には収量が多くなります。

枝透かし、摘葉・摘芯で日当りを維持する
  梅雨明け後に草勢が弱くなり落花が増えるのは、子枝や孫枝が混み合ってきて日当り・風通しが悪くなるからです。この梅雨明け頃から収獲時の、子枝や孫枝の切り切り戻し、日当りが悪く弱いふところ枝の間引き、古葉(ふところ葉の付け根の葉)の摘葉、垂れた主枝の再誘引作業、などが重要になってきます。また、主枝も太くて勢いのある側枝が伸びてくるよう、草勢が弱ってきたり支柱の高さまで伸びたら、摘芯します。
 ただし一般に、80~90gの水なすを開花後23~25日で収獲するには、1つの果実あたり少なくとも5~6枚の葉が必要であると言われています。あまり1度に沢山の枝を間引いたり、葉を摘み取ると、ますます脇芽の勢いや果実の肥大が悪くなってしまいます。収獲時に側枝の切り戻し、古葉の摘葉などを適宜続けていれば、それほど混み合うところはありません。

以上、このように艶なし果の問題を解消するには、総合的な対策が必要となります。

葉が実に触れていないkeinou01[1].jpg

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